Unknown Worlds Entertainment:Unity のケーススタディ
あるインディースタジオはどのようにして、ゲームプレイの本質を犠牲にしたり、優秀なエンジニアを何か月間も拘束したりすることなく、大成功を収めたフランチャイズをまったく新しいプラットフォームに移植したのでしょうか?Unknown Worlds(UW)は Unity Accelerate Solutions チームと提携することでこれを実現し、Unity エキスパートの開発者の助けを借りて『Subnautica』と『Subnautica: Below Zero』を Switch に移植しました。
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課題
メモリやフレームレートの問題を解決し、新しいプラットフォームへの移植に関してエキスパートによるガイダンスを入手する
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プラットフォーム
PC、PlayStation、Xbox、Switch
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チームメンバー
アニメーター、アーティスト、デザイナー、プログラマー合計 28 人
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所在地
世界各地
インディーの人気タイトルから Steam 早期アクセス第 1 位になるまで
2018 年の発売以来、『Subnautica』は PC、Xbox、PlayStation 合計で 600 万部以上を売り上げています。その続編である『Subnautica: Below Zero』の早期アクセスバージョンは、Steam で第 1 位に輝き、Switch でのローンチも成功を収めており、その数字は飛躍的に上昇すると見込まれています。
UW のチームにとって、クロスプラットフォームでプレイできることは必須であり、Unity Accelerate Solutions は UW が掲げていた野心的な目標の達成に喜んで力を貸しました。


成果
- UW のフランチャイズタイトルと続編の Switch への移植をスケジュールどおりに進め、成功を収めた
- ゲームプレイ、コードアーキテクチャ、ソース管理に注力できるよう開発者を解放した
- Unity の Addressable Assets System を使用して『Subnautica』と『Subnautica: Below Zero』のメモリアーキテクチャを全面的に再構築した
- Plastic SCM によりソース管理とベストプラクティスのワークフローを最適化した

未知の海中世界で感じる恐怖と謎
『Subnautica』は、未開の海洋惑星を舞台としたオープンワールドのサバイバル探索ゲームです。開発当初のゲームの舞台は宇宙でしたが、スキューバ愛好家の共同創業者兼デザインディレクターである Charlie Cleveland 氏が、海中世界はプレイヤーをゲームの世界に引き込む強力な視覚的差別化要因となると提案しました。プレイヤーは危険に満ちた海洋惑星に身を置き、その惑星で頂点に立つ捕食者が目に見えないすぐ近くのところに潜んでいる身も凍るような感覚など、リアルな恐怖に襲われます。
プレイヤーはあらゆる方向に自由に泳ぎ回り、ほぼどの方向に向かっても物陰や隙間に何か新しい発見があります。

社内エンジンから Unity への移行
2015 年に、Unknown Worlds は同スタジオの前作『Natural Selection 2』で使用した社内エンジンから、Unity に移行しました。「『Subnautica』の開発に着手した当時は、ゲームプレイに関わるさまざまなアイデアを試す必要があることはわかっていました」と McGuire 氏は述べています。しかし、独自に開発したエンジンはラピッドプロトタイピングにはそれほど効果的ではなかったため、Unity を採用したところ、制作のスピードアップにつながり、チームのお気に入りになりました。「私たちは Unity を使用してプロトタイピングモードから開発に段階的に移行しました。このことは、カスタムツールを簡単に統合し、Unity をコンテンツ制作用に簡単に拡張できたため、特に有益でした。」
グラフィックが複雑なゲームは独自性が高いものが多い一方で、新しいプラットフォームに移行する際にも独自の問題に直面することがあります。そして『Subnautica』の Switch へのダウンポートにおいて、同スタジオは PC やコンソールとは機能と要件が大きく異なるプラットフォームに対峙しました。

クロスプラットフォームの課題に直面
1 つのゲームを複数のハードウェアプラットフォーム向けに制作するうえで直面する課題の一部としては、ゲームコントローラーが数本の指で操作するタッチポイントから複数のジョイスティックにわたることや、CPU が古いチップからデスクトップ用の 24 スレッド、4.8 GHz ハイパースレッドプロセッサーにわたることなどが挙げられます。品質を完璧に保証するためには数百台ものデバイスのテストが必要となる場合があり、認可条件があまり明確でないことがあるため、それを満たすのにかなりの時間がかかることがあります。
カスタマイズされた水のレンダリングや印象的なボクセル環境を備えた『Subnautica』のようなゲームを PC からコンソールに移植することは課題の 1 つでしたが、Switch への移植はまったく異なるものでした。それは簡単な作業ではなく、そのゲームで売りにしている特徴のいくつかを取り除くことなしには不可能であった可能性すらありました。
Unity のエンジニアと共にマーケティングの機会を生み出す
同スタジオは 2013 年より Unity と連携して数々のことに取り組んできました。その中には Unity Integrated Success も含まれ、Unity は同スタジオのゲームにとってコアコンポーネントであったため、カスタム開発について Accelerate Solutions に支援を求めたのは理にかなっていました。
Unity のチームは、同スタジオの以前の作品やプロトタイプについて調査し、問題解決の糸口となる質問をして、移植に向けて包括的な計画を立て始めました。Verrette 氏はこのように述べています。「Unity は最適化とすべての要素を移動する方法について計画を立ててくれたほか、大きな課題が存在する可能性がある部分を特定してくれました。」そのゲームはもともとコンソール向けではなく PC 向けに制作されたため、Switch への移植に至っては未知な部分が数多く存在していました。「これまでに適応しなければならないことはわかっていましたが、Unity の柔軟性は私たち全員が先入観を持たず、可能な限り最高のソリューションを追求するのに役立ちました。」

全員とすべてのものを同期させる
アーティストが常に正しいアセットとビルドバージョンにアクセスして作業を進められるようにすることは、共通の課題です。すべてのコードとアートコンテンツを管理するワンストップソリューションである Plastic SCM を採用する前に、UW は複数のソース管理製品を試しました。UW は、Unity Editor をすべて同スタジオのリポジトリ内に格納し、サンフランシスコのプログラマーであっても、ブリュッセルのアーティストであっても、制作に関与するすべての人物が確実に同じバージョンを使用するようにしました。Verrette 氏はこう説明しています。「当スタジオのリポジトリは大規模ですが、すべてが常に同期されています。そして、Plastic SCM は驚くほど使いやすく、当スタジオのアーティストも技術的な知識のないメンバーもまったく不安はありません。」

メモリアーキテクチャから次世代に向けての準備まで
プロフェッショナルサービスと UW のチームが解決しなければならなかった最も重要な問題の 1 つは、メモリ管理でした。そこで、コンテンツパックの制作と展開を簡単にするアセットをロードする手法である、Unity の Addressable Asset System を実装することを検討しました。しかし、『Subnautica』のアーキテクチャは独特であり、そのツールが設計された目的とは厳密に言うと少し異なりました。Switch のメモリ制限はどのゲームにとっても比較的厳しく、『Subnautica』は複雑であるため特に厳しくなっています。
Addressables システムを開発した Unity のエンジニアと協力して、チームはどうにか『Subnautica』用にツールを適合させました。同スタジオにとって、次世代のデバイス向けにゲームを準備する際に、Unity から追加の支援を受けることは簡単でした。「Unity は当スタジオのゲームを知っており、当スタジオのシステムの仕組みをすでに理解していて、次世代のロードマップについて知っていることをすべて共有してくれます」と McGuire 氏は言います。

Unity の専門知識により UW でできることを拡大
早期アクセスにて『Subnautica: Below Zero』が絶賛を受けた後も、Unknown Worlds は引き続き Unity を使用して、ゲームのほぼすべての要素を最適化しました。同タイトルは 2021 年上旬に PC、コンソール、Switch にわたってリリースされ、商業的に素晴らしい成功を収め、未来が輝かしいものになることが見込まれています。Verrette 氏はこう述べています。「Unity は最高のゲームプレイを実現してくれただけではなく、この素晴らしいゲームを新たに Switch でプレイできるようにしてくれました。Unity は長期的なパートナー以上の存在であり、コアチームの一員です。」